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例えば、中学を卒業して高校に上がった時。
胸中には新しいステージへの不安と、そして期待があって。
毎日顔を合わせていた友達とは全く違う人たちの中……それまで作り上げていたのとはまた違うイメージの自分を構築できるような気になったりした。

……今になって思う。
史跡で拾ったペンダントから初姫さんに呼ばれて過去に行った時も、その感覚に近かったんじゃないだろうか、と。
確かにあれは現実に私が体験したことだけど……体は初姫さんだったし、『どこか違う次元のこと』のような思いもあったんだと思う。
あの過去で霞丸さんと出会って恋をして……、色々なことを乗り越えて二人で現代に戻ってきて、全てが上手くいったように思えた。

……でも。
現実は物語のように『めでたしめでたし』で終わることなく、続いていく。
そうすると、新たな問題が生じてきたりするわけで。

私は、思い出したのだ。
自分が……、
今まで『彼氏いない歴年の数だけ』……というかはっきり意識した初恋もまだで、どちらかと言えば内気で、インドアで、大人しい女子だったということを……!

私は、『それまでの自分』と『ペンダントに呼ばれて行った先で構築した自分』の折り合いの付け方に、今一つ思い悩んでいた。

……そんな、ある日のこと。


独壇場LOVERS


「紗依ー、今日さあ、ちょっと寄り道しない?この間いいねって言ってたカフェ、店員にすごい好みの人がいてさー」

授業が終わってHRまで済んで、帰り支度を急いでいた私に、友人たちからこんなお誘いが。
以前なら一も二もなく行っていただろう。
素敵な人もいいけど、カフェで甘いものを食べるのはもっと大好きだし。
……なんだけど。

「ごめん、私今日は行けないや」
「え?今日部活あった?」
「あッ……いや、うん……ぶ、部活はないけど……」

口ごもった私に、友人たちの視線が突き刺さる。

 し ま っ た 。 と思った。

普通に、ナチュラルに、自然に、何事もなかったかのように、言葉の前に『家の用事で』ってつけておけばよかった……!

「……サヨリサン、サイキンブカツノホウモヤスミガオオインジャナクテ?」
妙に私を取り囲むように広がった友人たちから、何やら黒い妖気が漂う。
……というか何故にそんな口調でカタコトに……。

「…………もしかして…………」


「「「オトコ!?」」」


ザン!!と詰め寄られて、思い切りのけぞる。
……別に、この年なら、彼氏がいるのなんか普通だろう。
というのに、これだけの反応をされる私……。
……それまで、いかに何事もなかったかということがわかるというもの……。

ほんのりトホホとなっていると、より一層周囲がざわついた。
「そ、その沈黙は肯定!?肯定なの!?」
「ちょ……紗依いつの間にー!?全く気付かなかったんですけど!!」
「ブルータスお前もかー!!お母さんはそんな子に育てた覚えはありませんよ!」
「ちょ……みんな、落ちつ……!く、苦しい……!」
いきおい首を絞められて、降参とばかりに床を叩く。
「吐きなさい!いったいどこのどいつなの!?」
「はっ……!まさか許嫁!?執事!?それとも家に帰ったら突然12人のお兄ちゃんが!?」
「そんなブラザーがプリンスでメディアがワークスな展開にー!?」
「お、落ち着いてみんなー!言ってることが意味不明っていうか最後元ネタが女性向けジャンルじゃなくなってるから!」


どんな男なの会わせなさいよとねじこんでくる友人たちを何とかかわして……下校した。
それまでまったくそんな気配すら見せなかった私がいきなり、というところで、みんなが(概ね好意で)心配してくれているのもわかっているんだけど……。

………………………。

私は、他でもない自分に対して、大きなため息をついた。




最近夜の警備の仕事を始めてしまった彼と会えるのは、学校から帰ってから彼が仕事に行くまでのわずかな間しかなくなってしまっているので、帰り道は自然と急ぐことになる。
学校から家までは電車で二駅という、一時間もかけて学校に通っているような人からすれば大したことない距離なんだけど、今はその距離がとてももどかしい。


霞丸さんは、私の自慢の恋人だ。
強くて優しくてかっこよくて!
それはもう、見せびらかしたりのろけたりしたいに決まっている。


……だけど。
素直にそうできない、気後れしてしまう理由が私にはいくつかあった。


「ただいまー」
「おかえり、紗依」

ようやく帰ってきて玄関の扉を開ければ、とろけるような笑顔で最愛の人が迎えてくれる。
先ほどの大きなため息などどこへやら。
これ以上の幸福があるだろうか。いやない。(反語)

ゆるく後ろで束ねた長くて綺麗な銀髪。
均整のとれた体型に整った顔立ち。
高価なものである必要などないというので駅前のスーパーで買った安物のシャツとパンツですら、どういうことかかっこよく着こなしてしまう彼は、柔らかく笑んで大きな手で私の頭を撫でる。

「母上は所用で外出中だが、夜には夕食を買って帰ってくるそうだ。ちなみにHACHIKIのロールケーキがあるから、今紅茶を淹れよう。制服を着替えてくるといい」
「はーい!」
誕生日とクリスマスがいっぺんに来たようなこの幸せ。
元気に返事をした私は霞丸さんと甘いもののことで頭をいっぱいにしながら、超特急で自室に戻り制服を着替えた。
……幸せすぎて頬が緩むのを止められない。


リビングに戻れば、「おやつ準備完了」の霞丸さんがソファで待機中だ。
私の姿を認めると、にこにこと手招きをする。
「おいで、紗依」
二人きりの時の私の指定席は、彼の腕の中と決まっているらしい……。
かなり恥ずかしいけど、霞丸さんに後ろからぎゅっと抱きしめられるのは、大好き。

「あれ?ケーキ……」

テーブルに乗っているのはカット済みの一人分と思しきロールケーキ。
一つしかないなら切り分けますか?と振り向いた頬に軽く唇が触れる。
「俺は今は空腹じゃないから、紅茶だけでいい」
「えーと……じゃあ遠慮なくいただきます」
フォークを手に取り、ケーキを口に運ぶ。


「それに、ケーキより紗依が食べたい」


「!!!!!!!」

味覚が甘さを捉えるよりも先に、耳元で囁かれてむせそうになった。
耐えて、飲み込んでからようやく咳き込んだその背を霞丸さんがさすってくれる。
「大丈夫か?紗依」
「か……霞丸さん……!心臓に悪いです」
「かわいいな、耳が真っ赤だ」
「~~~~っあ、赤くもなります……!もう……!」
愛しげに眼を細められて、より一層照れてしまう。


………私達は始終、この調子だ。
幸せの過剰摂取で死ぬ病気とかあったらもうとっくに死んでいるのではないかというほどの常春状態。
霞丸さんのことを考えるとにこにこしてしまってどうしようもない!


……そう、これが、未だに学友に霞丸さんのことを話せない理由だった。


私は、彼のことを誰かに話したり紹介したりするときに、冷静でいられる自信がこれっぽっちもなかった。
開き直ってしまえばいいというのはわかっている。
臆病すぎる自分が悪いのだろうということも。
でも霞丸さんといるときの自分は、……そう、あの過去に行った時の自分であって、……同じ人間ではあるんだけどどこか違うというか。
違う場所で構築した自分を、それまでの自分しか知らなかった友人たちにさらす勇気が、どうしても出ないのだった。


「紗依?……どうした、進まないのか?」
はっと気づけば、フォークを持ったまま考え込んでしまった私を心配そうに見下ろす彼。
「あ、ち、違います!えーっと、ちょっとその……考え事を」
「考え事?」
さりげなくそらした視線を追いかけられる。
『俺に話せないようなことなのか?』という視線が…………、

何かとても不当に隠し事をしているような気になってしまっていたたまれない!

「あー、うー、……友達が、その、…か、彼氏に会わせろって……言うんですけど……」
「紗依の学友が?俺に?……別にかまわないが」
覚悟を決めて言ってみたけど、じっと見上げた至近の霞丸さんは、まったく動じた様子はない。

当たり前だ。
霞丸さんは私が悩んでいることに関しては全く逆の立場なのだから。
……もっとも、もともとこういうことで思い悩む性格ではないようでもあるけど。

「ですよね……」
「??何で残念そうなんだ?」
「えっと…………、霞丸さんが友達に目移りしたらやだなー、とか」
ぼそぼそと、言い訳する。
本当はそこはそれほど心配していないけど正直に言うのは恥ずかしくて。
「目移り……?」と首を傾げた霞丸さんが続けた言葉は、私を驚かせるのに十分なものだった。

「先日学校に行ったが、特に何の感慨も抱かなかったな」

「……え!?学校に来たんですか?いつ」
「1週間くらい前だ。紗依が忘れた弁当を届けに」
そういえば……忘れたと思ったお弁当がお昼には鞄の中に入っていたということがあったような気がする。
それ以外には何の異常もなかったので、忘れたと思ったけど忘れてなかったんだ、と気にも留めなかったけど……。
「じゃああの時のお弁当は霞丸さんが!?い、いつの間に!?っていうか学校入れたんですか!?」
昨今、物騒な事件も多いので、学校は普通部外者は入れないはず。

「もちろん、忍んでな。誰かに気付かれるようなヘマはしない」

ふっと不敵に、誇らしげに笑う横顔は見とれてしまうほどかっこいいけど……、


要するに 不 法 侵 入 ですよね?


「紗依が無事、弁当を食べるのを確認してから帰宅したが……」
……しかも食べるところまで見られてた!?
気付かなくてごめんなさい、でも助かりましたありがとうございます。って素直にお礼を言うべきなのに、…驚きすぎてタイミングを逸してしまった…。
霞丸さんって……忍者だもんね……と、彼のルーツを再確認して、若干遠い目になりながらやけに渇いた喉を潤そうと紅茶を一口。


「紗依よりかわいい女性徒など存在していなかったように思う」


今度は紅茶を吹き出しそうになった。
吐き出さないように死ぬ気で飲み込んでからむせる私の背中を霞丸さんが以下同文。
「大丈夫か?紗依」
「……………っ」

ああ~、もう!


正直、全然大丈夫じゃないです!


私はむせて涙目になったのもそのままに、きっと霞丸さんを見上げた。
「霞丸さん……」
「紗依?」

「あなたをこんなに好きになってしまった責任をとってください!」

「え?」


『ちょっと付き合うことにしてみた』程度の彼なら、こんなに悩むことなんかなかったのに。
彼氏の愚痴とか言えるような普通の恋なら、ためらうことなく友達に紹介したりできたのに。
……霞丸さんが大好きすぎるから。
友達に自慢してる時間すら惜しいほど、ずっと二人きりでいたいくらい好きだから。
こんなにちょっとしたことで悩んじゃうんじゃないですか!


……と、口には出さなかったけど、万感の思いを込めて、告げた言葉に。




「……いいのか?」




しばし固まっていた霞丸さんは、そう、伺うような小さな問いで返した。
意味を計りかねて、私は首を傾げる。

「そうなると……俺の方も責任をとってもらわなくちゃならなくなるが」

「!」

請われた内容をようやく悟って、私は真っ赤になった。
というか、私の言ったこと、なんか様々に解釈できる結構すごいことだったよね。
……すごい今更だけど。

「……う……そ、そんなの……いいに決まって……」
もちろん拒否する理由もないので頷こうとするのを、遮られた。
「あー、いや、今この話はやめよう」
「え?な、何でですか?」

急に話を打ち切られたことで不安になる。
何か、失敗してしまったのだろうか。
青くなった私の耳元で、彼は低くした声で囁いた。


「これから仕事に行くのに、紗依のことばかり考えて一晩中上の空になると、困るからな」


「…………っ」


また一気に赤くなって、何か言おうとがばっと振り向けば、ついばむような、キス。
舌で軽く唇をなぞって、「甘いな」と微笑う彼の表情が、ケーキなんかよりずっと甘くて。

「だから、もっと時間のある時に……じっくりしよう、…な?」
「そ……れは、話を、……ですよね?」
霞丸さんはにこにこと笑って答えない。
「紅茶、もっと飲むか?」
「あっ……はい。有難うございます……」
背後から伸びた腕からカップに注がれる紅茶を見ながら、私は甘い空気を少し散らそうと再びロールケーキに取りかかった。


……きっと、たぶん。
このドキドキが落ち着いたりするようなことはまだしばらくなさそう。
ということは、気後れしていたら彼氏自慢をすることなど当分できない……そういうことで。


「……さっきの話なんですけど」
「ん?」
「友達が、霞丸さんを見たいって、話」
「ああ……時間が合えば、俺はいつでも構わないが……」

霞丸さんは、そこでふと言葉を切って思案顔になった。

「……霞丸さん?」
「そういう時はやはり、こんな風にはくっついていられない……よな?」
「あっ…当たり前です!」
「………………………」

そ、そこまで落胆しなくても……。

「じゃあ、あの…ちょっと顔見せたら帰るって、友達には言っときますから」
その一言でパッと顔を輝かせる彼に、嬉しくなってしまう私もどうかしてる。
……実は私も、少しだけそれを懸念していた……というのは、やっぱり恥ずかしいので黙っておこう。
『もっと一緒にいたい』なんて言うと、彼が仕事に行き辛くなってしまうかもしれないし。
だからそれ以上は言わないで、そっと寄りかかって「その時はよろしくお願いしますね」と笑いかけた…………………


……んだけど。






「………………………紗依」






「は、はい」
「悪いが、ケーキの続きはあとで食べてくれ」
「え、え?ええっ!?」
「行くぞ」


唐突に抱きあげられたかと思えば、あっという間にベッドに転がされていて。


「か、霞丸さん?…あの、このあと仕事なんじゃ……」
「大丈夫だ。時間まであと30分ある」
「そ、そういう意味じゃ……!~~~~っ」
「俺を誘惑するお前が悪い。諦めろ」
「誘惑してません!待っ…霞丸さん…っ!」
「…大好きだ、紗依」

……嫌でもないのに拒否できるわけもなく。
落とされる口づけと心地よい重みを受け止めながら。
その背にぎゅっと抱きついて。

「私も、大好きです……霞丸さん」

と、ありったけの想いを囁いたのだった。









 

◆あとがき◆

…… や っ ち ゃ っ た ……。

書いちゃったよYo-Jin-Boの霞×紗!!
しかもギャグにしようと思ってたのに何ッだこのイチャイチャラブラブ!!
密着率100%!ですよ!!
他ジャンルでやってた夢小説だってこんなの書いたことあったっけ……?という感じであります。
全ては霞丸が激デレなせい……。イワキワルクナイヨ。

物語中のかすみんのフラグの立ち方はすごいですよね……。
あなたアレだけの交流でヒロインのどこにそんなにキちゃったの?みたいな!
さよりん魔性の女……!
ええまあ可愛いですもんね彼女は!!
そんな二人がイチャイチャしててくれるのはもうこちらも超眼福!!
フォーエバーにラブラブしちゃってていただきたく!!

……しかし、霞丸のあの義眼って……。
現代に来てから、どう、したんでしょうね…?
そのまま?なのかな?
顔に傷とかあるし……。
その辺をリアルに描くと面倒なので、
今回(…今回?次回もあるの!?)は軒並みスルーしてみましたが……。

そして霞丸、ビリビリ攻撃とかフツー出来るんだよね!?
すごいスキルの警備員すごいいい!!(のちに武闘派ロックシンガー)
霞丸の現代での暮らしぶりに滾って仕方がありません。
その後の二人に幸あれ!!

…次は一刀斎書きた(以下検閲により削除)
 

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